金宇館は美ヶ原高原の麓の里山に佇む、わずか五室と離れ一棟5室と離れ1棟の小さな温泉旅館です。

昭和初期に建てられた木造三3階建ての宿屋をもう一〇〇100年残したい。

大切にしたのは時と共に味わいが増す自然な素材を用いること、簡素であり良質であること。

風情ある温泉街や息を飲む絶景はありません。
あるのは刻まれた歴史を残した空間の時間の蓄積と伝統的な宿屋の美しさ。
そして建物を囲む庭園の刻々と変化する光と風。

その中で過ごす、里山の恵を味わう時間。
湯に浸かり解き放たれる瞬間。
大切な人と語らうひと時。
そして無になる時間。
当館で過ごす一日が掛け替えのない「時」となりますことを願っております。

古い宿屋の風情に馴染むよう昔ながらの木造の浴室棟を作りました。建物は宮大工によって釘などの金物を使わずに建てられた総ヒノキ造りの湯小屋です。
自然の空気と季節の移ろいを存分に感じていただきたいとの思いから露天風呂のみとしました。
湧き出た温泉が庭に溜まり、小屋組みの美しい大屋根で覆ったような安心感と解放感のある浴室棟が出来ました。初代が掘り当てた無色透明で肌当たり柔らかな「御母家の湯」をご堪能下さい。

信州の里の恵みと旬を存分にご堪能いただきたく、食材の持ち味を崩すことなくシンプル且つ、新たな味の発見を感じていただけるようなお料理を目指しております。食の時間を通してご滞在がより豊かになるよう、器や空間にも気を配り、地産の安心安全な食材選びと手間を惜しまない仕事で心身ともに癒される美味しさをお届けしたいと考えております。お食事の空間は建築当時の風情が色濃く残る大広間を板張りのダイニングに改修致しました。朝と夜で表情を変える庭園を眺めながら、食のひと時をお愉しみ下さい。

昭和初期に造られた石組みの主庭を眺めるエリアをラウンジに改修しました。
宿の中心的な居場所としてご滞在中に何度も訪れていただける場所となるよう、庭との繋がりを大切にしながら空間を整え、心地の良いソファーを誂えました。苔むした庭石が宿の長い年月をもの語り、庭を彩る木々は四季折々の表情で目を愉しませてくれます。水音と小鳥の囀り、静かに流れる音楽が心を和ませ、暖炉の火もまた格別でしょう。
もう一つのリビングとして湯上りに寛いだり、お茶やお酒を愉しんだり、またはお客様同士の新たな出会いが生まれる社交場として、お客様が思い思いにお寛ぎいただける空間となることを願っております。

玄関脇の土間スペースに小さなショップギャラリーを作りました。
ものづくりの文化が残る松本ならではのセレクトと金宇館の世界観を意識し、地元作家の器や松本の品々をご紹介しています。また作家とオリジナルでデザインした宿の備品も取り揃えておりますので、ご滞在の中でお気に召した物を思い出と共にお持ち帰りいただけます。
作家の個展や展示会など、これからの金宇館と松本をより深める場所にしていけたらと思っております。